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Yahoo!ブログ閉鎖によりYahoo!から移行しました。吉田の講義、考察などを書いていきます。

【ガバナンス論】 公共性論2010

今年度のガバナンス論では、第一回にはガバナンス論概説として、「ガバナンス」という観点の登場とその概要を紹介しました。
第二回では、ガバナンス論の諸相として、ローカルガバナンス、メディアガバナンス、インターネットガバナンス、コーポレートガバナンス、科学技術ガバナンス等のさまざまな領域でのガバナンスに関わる動向を紹介しました。
webに資料を載せておきます。

これからガバナンス論は、公共性論(民主主義)→合意論(言論)→参加論(協働)と、ガバナンス一般に関わる社会思想的観点から議論を進めます。

前回提出のレポート「ガバナンスの事例を挙げよ。そして授業で紹介したグッドガバナンスなどのポイントを押さえて説明せよ」にコメントします。
事例としては、町内会などでの自治、浜松祭りなどの町のイベント、まちおこしの取り組み、自分の所属していた部やサークルの活動、医療等の専門領域での合意、昨今の日本や自治体での政党政治、などでした。活動への参加協力(労力・費用など)や活動連携、ルール決め、話し合いによる合意形成、webによる透明性の確保、アンケートや投票等による意見聴取・反映(包含)などなどの面を挙げて、だからこれがガバナンスにあたります、という形式でした。

では、自分の挙げた事例について、自分の挙げた面から見て、どう評価できますか? 現実の問題は、ただガバナンスに妥当するかどうかが問題なのではなく、ガバナンスという観点を使ってどうその取り組みを評価して改善できるかなのです。

そのときに、大事なのが理念です。ガバナンスのさまざまな側面は、ある理念を実現するためという意味を持っています。この意味を把握することで、ガバナンスについて、それぞれの側面から取り組みを評価して改善を考えていくことができるのです。理念とは、価値を含みますから、必ずしも一つの答えがあるわけではありません。ですが、戦争や貧困、財政破綻などの危機的状況を避けること、日本という国に限ってみれば憲法に表現されているような民主主義を保証することなどの、ある程度の最小公倍数があるはずです。市民による共同生活の構築を目指す公共性論は、古代ギリシャから続く思想であり、公共領域の(パブリック)ガバナンスの基盤となる考え方です。

まずは2009年度のエントリーを読んで下さい。
公共性論2009(Blog2735 4月28日)

近代的公共性=ガバメントの失敗=暴力→新しい公共性の必要=ガバナンスという流れが伝わったでしょうか。ただし、注意して下さい。ガバナンス論は公権力や巨大資本のガバナンスへの参加を拒絶しているわけではありません。これらは、どう考えたって社会を構成する重要なアクターです。ガバナンス論の問題は、特定のアクターが権力を奪取すること(革命)にあるのではありません。諸アクターの関係や権限などをどう設定して、かつそうした設定がうまく機能するようにそれぞれが成長?できるかなのです。これを社会デザインと呼ぶことができるでしょう。