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「アイ・ロボット」(映画)

「アイ・ロボット」という映画がある。眠れない夜になぜかこれを観る気になって鑑賞したので、ネタばれしない程度にコメントしておこう。

人工知能、そしてロボットがこころを持ちうるのかという古典的なテーマを、アシモフの『私はロボット』(ハヤカワ)に出てくるロボット工学3原則のロジックの上で展開させたストーリーだ。

なかなか面白かったが、この映画の鑑賞・評価のポイントとして以下を指摘しておこう。これらの点を気にして観るのもそれなりの楽しみが可能でしょう。

まず全体構造として、キリスト教的なメシアのテーマと個体としてのロボットに意識が生じるかという哲学的な問題のリンクがうまくいっているかどうか。
そして、後者のテーマについては、身体性の問題をそれなりに盛り込む気があったのかどうか、その点は「攻殻機動隊」と比べて見るのも面白いだろう。

全体を通じて、映像としてみせるシーンや象徴、暗示のような小細工が用意されていて、少々あざとい気もするが、解読する楽しさも盛り込まれているので、ミステリーとして楽しむのも可能だろう。

全体に、心や正義の問題に対する踏み込みはやや浅い点があり、自分なりに考えるきっかけとしてのいみは認められるという程度。だが、アクション、映像、ミステリー的な要素を加味して評価するなら、まあそれなりにバランスがとれていて、楽しめた気がする。

もっとつっこみたい問題について詳しいことも書きたいが、それはネタばれになる可能性も高いから書きません。私の基本的な問いはこの映画で描かれる「心」のルーツと性格に関するものです。続きは授業で考えてみましょう。専門科目の「技術思想論」で取り上げるか、学際科目でも取り上げるか。

映画ってのは想像力を刺激するとともに、想像力を固定化してしまう点もあるので、楽しむだけでなく、それについて批判的に考えてみるのは、けっこう意味のあることだと思います。