blog2735

Yahoo!ブログ閉鎖によりYahoo!から移行しました。吉田の講義、考察などを書いていきます。

思考停止問題1

小森陽一レイシズム』とJ.ジェイコブズ『市場の倫理 統治の倫理』に共通するエートスがある。合理的な批判精神が倫理の戦略であるということ。

小森によれば、レイシズム(人種差別など)は、特定の集団的特長に対して無根拠に価値付けされた言葉を、無批判に固定することで生まれる。「思考停止」が生じ、差別が固定化される。そこで、小森によればわれわれはその言葉がどうしてその集団につけられたのか理由を問いただし、無根拠性を明らかにしつづけなければならない。

ジェイコブズによれば、社会を構成する倫理には正直や勤勉などの商人的規範とも言いうる「市場の倫理」と伝統や忠実を重んじる武士的な規範とも言いうる「統治の倫理」の二種類がある。この二種類はそれぞれで一貫しており、両者の混同が汚職や脅迫などの世に悪徳を生み出す。だから、この二種類は身分固定によってでなければ各人の自覚によって区別されねばならないだろうが、思考停止によって自覚が失われると、混同が生じるのである。

そういうわけで、思考停止は世のモラルにとって大敵であり、批判が倫理にとって必要な武器ということになる。