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Yahoo!ブログ閉鎖によりYahoo!から移行しました。吉田の講義、考察などを書いていきます。

本を出しました

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このたび自分の著作を出版しました。
『ウィトゲンシュタインの「はしご」』、ナカニシヤ出版、2009年、\4,200

これは、京都での大学院時代に研究したウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』(『論考』)という本についての、研究書になります。
4年前に完成した博士論文をベースに、市販できるように、表現を工夫し、構成も一般向けの解説&根幹の主張部分と専門家向けの議論部分に整理して、読み易くしたものです。
いままでウィトゲンシュタインについて聞いたことのない人には、難しいかもしれません。
しかし、ウィトゲンシュタイン言語哲学分析哲学関連の著作や解説書を読んだことのある人、あるいは講義などで聞いたことのある人には楽しんでもらえるだろうと思います。

この本の「売り」は以下の点です。
1:『論考』の言語論は分析哲学のコアとなる議論となっているが、これについて理論的な経緯や成果に踏み込んで丁寧に解説したので、分析哲学の入門書として読める。
2:『論考』の倫理については従来から難解とされ、さまざまな解釈が提出されてきた。本書では、これについて私なりに一つの提案をしてみた。多分に趣味の合う合わないという要素が関わってくる話題ではあるが、一つの立場として読んでいただけるだろう。
3:近年、北米を中心に、ウィトゲンシュタイン研究は根本的な急展開を遂げている。だがこれについて詳しくフォローした文献は、日本語ではおそらく皆無である。本書は、この点を日本におけるウィトゲンシュタイン研究界に対する貢献とする。
4:『論考』の言語論と倫理を一貫した全体として解釈することは、国際的に見ても近年の『論考』研究の重要なテーマである。本書は、これに対する一つの解を提出しようとする。もしも完全な解が提出できていれば、国際的にも重要な仕事だと言えることになる。実際に説得的に議論が提出できているかどうかは読者の判断にゆだねるしかないが、私なりに10年間努力した結果なのでいかなる評価も受けとめたい。

他方、すでにいくつかの欠点も自覚している。
1:博士論文作成、そして今回の出版に当たって、かなり厳しいスケジュールの中で執筆したので、やはり記述が荒いということがある。同じ内容であってももしもっと十分に時間をかけて慎重に表現を練り校正できていれば、もうすこししっかりと議論構成できたはずだし、読み易くもできたはずだ。この点は、自分に責任があることだが、反省としたい。
2:最新の研究動向が十分にフォローできていない。博士論文を仕上げた3-4年前の研究動向までは、英語文献までだが、フォローした。この点は、他のウィトゲンシュタイン本に比しての強みと言える。しかし、その後の研究動向については、残念ながらある程度のフォローに止まっている。ただし私の見た限りでは、その後に革命的な研究が出た形跡はない。
3:価格がやや高い。若手研究者の処女作にしては、学部から一部助成金をいただき、またナカニシヤさんにもがんばっていただいたおかげで、価格を抑えることができたと思う。しかし学生にも気軽に買ってもらうには、やや価格が高くなってしまった。自分自身が長く苦学してきたので、個人的にはほんの数百円でも安くしたかった。

著者からのコメントとしてはこんな感じです。
ぜひ書店で見かけたら手にとって、そしてもし興味を持っていただけたら購入してもらえたらと思います。
確かに学界の評価が一番気になるし、また怖いものではありますが、一般読者にどれだけ買ってもらえるか、そしてどう読んでもらえるかが、個人的には気になっています。
それは、ウィトゲンシュタイン自身が、おそらく学界という枠に収まりきらない思想家だったことと関連しています。
哲学とは、必ずしも学界のものではなく、むしろ真剣に自分の生のいみについて考えようとする人のものだということが、私の考えであり、また私の受け止めたウィトゲンシュタイン自身の考えであるからです。

以上、ずうずうしく自己紹介させていただきました。

追加(4月21日):
Amazonにも登録されたようです。
http://www.amazon.co.jp/dp/4779503345
『論考』にじっくりと取り組もうという人でなければ読みやすい本ではないでしょうが、それでも何かは伝わるかもしれません。買って読んでくれる人がいれば、幸いです。

追加 書評の一部です。なぜか、画像が間違っている。。6/4