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Yahoo!ブログ閉鎖によりYahoo!から移行しました。吉田の講義、考察などを書いていきます。

#哲学

日本の思想 11 個人と公共性、そして共同性  『蟲師』「旅をする沼」より

【哲学2015】 日本の思想 11 個人と公共性、そして共同性 『蟲師』「旅をする沼」より 前回は『蟲師』(原作3巻、アニメ9話)「重い実」から、個人と社会の関係性を見た。「重い実」では、村のために自己を犠牲にする「祭主」とその精神を継ぐ弟子、そ…

日本の思想 10 個人と社会  『蟲師』「重い実」より

【哲学2015】 日本の思想 10 個人と社会 『蟲師』「重い実」より 前回まで、『蟲師』「海境より」「一夜橋」、そして永井均『マンガは哲学する』の「もうひとりの私-高橋葉介「壜の中」」などから、一人称の主体としての<私>の問題について考えた。…

日本の思想 9 <私>と主体  『蟲師』「海境より」

【哲学2015】 日本の思想 9 <私>と主体 『蟲師』「海境より」 『蟲師』「海境より」(原作3巻、アニメ12話) 男は、数年前、婚約者を海で見失う。彼は、海境で見失った婚約者を待ち続ける。数年後、男はギンコと共に、蟲の生み出す不思議な現象の…

日本の思想 8 身体と人格、他者 『蟲師』「一夜橋」

【哲学2015】 日本の思想 8 身体と人格、他者 『蟲師』「一夜橋」 前回は、『蟲師』「暁の蛇」(原作5巻、アニメ16話)から「記憶」そして「人格の同一性」について考えた。 記憶は、ベルグソンの哲学で見たように「時間」と「意識」との関係が深い…

【哲学2015】 日本の思想 7 身体と人格 『蟲師』「暁の蛇」

【哲学2015】 日本の思想 7 身体と人格 『蟲師』「暁の蛇」 前回は、『蟲師』「沖つ宮」(原作5巻、アニメ22話)などから「時の流れ」について考えた。 時間論について、「露を吸う群」についてのレポートについて、すこしコメントしておく。レポー…

日本の思想 6 時間論 『蟲師』「沖つ宮」

【哲学2015】 日本の思想 6 時間論 『蟲師』「沖つ宮」 「時の流れ」に関係する第三弾。前々回は予知夢の話、前回は体内の時のリズムについて考えた。今回は、『蟲師』「沖つ宮」(原作5巻、アニメ22話)、そして内山節の「時間」論・「過去」論(『…

【哲学2015】 日本の思想 5 時間論

【哲学2015】 日本の思想 5 時間論 『蟲師』「露を吸う群」 前回は予知夢を見る男の話から、予知(技術)と決定論、自由意志の問題、自己と無意識の関係、専門家による科学と技術の管理について考えた。今回、次回は、『蟲師』「露を吸う群」(原作2巻…

【哲学2015】 日本の思想 3 現代

本日は、西洋哲学の基本的概念のつづき、現代編である。ひきつづき、伊藤邦武『物語 哲学の歴史 ――自分と世界を考えるために』(中公新書)を参考にする。現代は、「認識と意志に代表される内面を持つ人間存在(近代的個人)」を中心に世界を考える思想が、…

【哲学2015】 日本の思想 2 「西洋近代の基本概念」2015年4月21日

【哲学2015】 日本の思想 2 本日は、西洋哲学の基本的概念のつづきである。ひきつづき、伊藤邦武『物語 哲学の歴史 ――自分と世界を考えるために』(中公新書)を参考にする。近代は、キリスト教的な世界観の影響とこれとの対立の中で、自然物とは異なる…

鑑賞&検討2015 『蟲師』 1 「緑の座」

鑑賞&検討 1 『蟲師』 1 「緑の座」 物語の要約 創造主の力を持った少年シンラとその管理者としての祖母廉子の再会の物語。 この物語では、「蟲」は一般的な生命よりも原始的な半生命で、通常は人には見えないが、現象に作用することで、さまざまな「超常…

【哲学2015】 日本の思想 2  「哲学の基本概念1」

日本の思想を検討するに先立って本日は、その道具立てとして、西洋哲学の基本的概念にざっと目を通しておこう。哲学は、人間にとって大切な概念を見つけたり、吟味したり、整理したりする営みということもできる。だから、今日紹介する哲学的概念は、西洋哲…

「天城越え」という歌 Sing Traditional Janpanese song

「天城越え」を歌うということは、その世界観、すなわち天城越えそのものを否定することのように思える。 人が天城越えをもし信じるなら、その人はそれを口にしないはずだ。 なぜなら、それが天城越えの世界観だから。 言葉にできない世界を信じ、そこに身を…

写真とは何か Photograph

写真とは何か。 SubjectをObjectに、ObjectをSubjectに変換するもの。 写真は対象を表現していない。対象を借りて撮影者を表現しているのである。 撮影者のまなざしがそこに記録されているのであり、対象者はその光学的表面を、いわば文字にインクを、提供し…

「古来よりの日本語」(木村敏)について語ること

木村敏「「自然」について」(『第三文明』1976年:『自分ということ』筑摩学芸文庫2008に収録)では、「古来よりの日本語」、「日本人は」、「日本の庭園は」、といった言葉が多用されていて、「西洋では」「西洋文明の自然の理解」といった用法と対峙され…

『危機と人間』、『アーレント』と『森の海』 2

映画「ハンナアーレント」を見た。東京最後の上映日、下高井戸の小さな映画館で、立ち見も出ようかというぐらいに、補助席が追加されたそのパイプイスで。雨にも関わらず、ひそやかにあつまって、狭い部屋のなかで、学生時代のように。「映画『ハンナ・アー…

『危機と人間』、『アーレント』と『森の海』 1

『情報学研究』という静大情報学部で発行する雑誌の中で、「誌上シンポジウム 危機と人間」という企画に、「危機の時代とリアリティに基づく言葉」というエッセーを寄稿した。その後、このテーマに関連して、映画『ハンナ・アーレント』(マルガレーテ・フォ…

「愛」の逆転スペクトル

「逆転スペクトル」 「逆転スペクトル」問題は、次のように示される。信号機の青、赤、黄について、私とあなたの判断は一致すると思えるかもしれないが、じっさいに見ている色は一致していないのかもしれない。もしかしたら、あなたが赤で感じる色の感覚を私…